オール電化”のマンションは給湯器に注目!知っておきたい電気温水器の特徴
中古マンションの物件情報を見ると何気なく書いてある「オール電化」の文字。
オール電化といえば経済的な給湯システムの「エコキュート」を思い浮かべてしまいますが、実は中古マンションでエコキュートが使われているケースはまだまだ少ないことはご存知でしょうか?
実は、エコキュートではない物件では、「電気温水器」というものが使われているのです。
電気温水器ってなんか古そう?使いにくそう?
…そんな疑問にお答えすべく、今回はマンションの「オール電化」について解説します。
目次
1.マンションの「オール電化」の中身
物件情報に記載されているオール電化は、ガスが使われる設備がないことを示します。
具体的には、
- キッチンの調理機器がIHクッキングヒーター
- 電気で沸かす給湯器
- ガスを使用する暖房機器がない
という物件です。
この中で、マンションの購入時によく確認していただきたいのが、“給湯器”の項目です。
中古マンションで使われている電気式の給湯器の多くは、「電気温水器」というものです。
形は写真の通りで、電気で水をあたため、作ったお湯を本体に貯める仕組みとなっています。
4人家族住まいでは460L(リットル)タイプが推奨されており、三菱の製品の例だと「高さ1715・幅φ720・奥行791mm」もの大きさになります。
これがマンションの場合は基本的に専有部内に設置されています。
目立つ見た目なので、扉付きの小部屋に設置されていることが多く、内覧の際に何気なく開いた扉の先に大きな電気温水器が鎮座していて、「ここ収納だと思った!」と驚かれるお客様もいらっしゃいます。
当該物件が電気温水器を使っているか判断するのは簡単!
間取り図に「電気温水器」と書かれている小部屋があれば、電気温水器を使う物件だとわかります。
2.電気温水器の物件の特徴
ガス給湯器の生活に慣れている方にとっては、電気温水器がどのようなものかわかりにくいのではないでしょうか。
実際に私もそうだったので、ここで電気温水器の特徴を紹介します。
①深夜電力プランで光熱費節約できる可能性アリ
電気温水器は一気にお湯を沸き上げてから保温するため、深夜電力で電気代が安くなるプランとの相性が良いです。
また、そもそもオール電化にすることで、ガスの基本使用料はかからなくなるため、使い方次第で光熱費全体の節約に繋がります。
②大量に使うとお湯切れになる
深夜に沸かして貯めるため、お湯を使い切ってしまうとすぐにはお湯が出ない状態になります。
…とはいえ、居住人数に対して推奨される貯水量の製品が使われていれば、頻繁にお湯切れすることはありません。
複数の来客が泊まるなどでお湯をたくさん使うというご家庭でない限りは、お湯切れに対して過度に心配する必要はないと思います。
また、使いながら沸き増し可能な製品もあります。
たとえばPanasonicの460Lタイプの製品では、30分間で30Lのお湯を足せるとのことで、万が一入浴中にお湯切れになっても安心です。
内覧の際には、温水器の表面に記載されている品番を確認し、何リットルタイプなのか、居住人数やライフスタイルに合うか、どんな機能があるかを確認してみましょう。
③ガス給湯器より耐用年数が長い
ガス給湯器の耐用年数が10年前後なのと比べて、電気温水器は15年前後と言われています。
給湯器の交換は専有部の所有者が行います。
費用としては、本体価格+工事費で、ガス給湯器は20万円前後、電気温水器は30万円前後が相場です。
電気温水器のほうがやや高くつきますが、構造がシンプルなため壊れにくいという話もあるので、コスパとしてはガス給湯器と同じかそれ以上と言えそうです。
比較的長く使える電気温水器だからこそ、直近で交換されていれば長く使えてラッキー!
お部屋が綺麗になっているリフォーム済み物件でも電気温水器は古いままというケースもあるので、内覧時には電気温水器の表面をよく見て、交換された年(または何年製か)を確認してみましょう。
④非常時に水が使える
電気温水器に貯まった水(お湯)を、非常時に取り出して使えるタイプがあります。
マンションでは、断水時の水確保のためには上階と下階を行き来しなくてはならずとても大変なので、常に生活用水が確保できている状態はとても心強いですよね。
⑤専有部内に専用スペースが必要
電気温水器が設置されている小部屋は、コンクリートの躯体のままで配管だらけということもあり、収納などほかの用途に使うことはできません(安全面からも不可)。
仮に同じ専有面積でガス給湯の物件と比較すると、電気温水器の小部屋の分、単純な居住スペースとして使えるスペースは少なくなります。
ただし、設定変更・点検・交換以外ではほぼ開けない空間なので、普段は電気温水器があることを意識せずに過ごせると言っても過言ではありません。
3.電気温水器はエコキュートに変更できる?
電気温水器は経済的な深夜電力が利用できるとはいえ、空気も使うエコキュートと比較すると、電気代の安さでは負けてしまいます。
すると気になるのが、「エコキュートに変更できるのか」ということ。
…まず結論としては、変更できるかは物件によります。
チェックポイントは以下の3つです。
①製品を置くスペースが確保できるか
エコキュートは大気中の熱を集めるヒートポンプユニット(エアコンの室外機に似ている)と、貯水タンクがセットになったシステムで、それぞれの設置場所が必要です。
もともと電気温水器が設置されているマンションであれば、貯水タンクは電気温水器があった場所に置けるかもしれません。置けない場合はバルコニーに設置するケースもありますが、十分なスペースが必要になります。
②配管が通せるか
室内の元電気温水器置き場に貯水タンクを置いた場合、バルコニーに置いたヒートポンプユニットを繋ぐ配管経路を検討しなければなりません。
たとえばバルコニー側の壁に管を通せる穴が開いていない場合、マンションの躯体に穴を開けて通す必要が出てきます。また室内の配管を天井裏や壁裏に通すことになれば、やや大掛かりな工事になります。
③管理組合が許可を出してくれるか
ほとんどのマンションでは、バルコニーは専有部所有者が使ってよいとする“専有使用権”があるだけで、厳密には共用部となっています。
そのため、ヒートポンプユニットを設置してよいかどうかはマンションの管理組合(住民で構成される組織)から許可を得なければなりません。
特に上記2のようにマンションの躯体自体を加工する場合は、耐震性低下の懸念などの理由で許可が下りないことも多いです。
…以上の3つから、マンションにおけるエコキュートへの交換は結構ハードルが高いことがわかるかと思います。
しかし、最近は上記の3つをクリアして、エコキュートに変更しているマンションもちらほら出てきているようです。
国も高効率で環境に優しい給湯器を推進しているので、これからはマンションにエコキュートを設置する例も増えていきそうですね。
電気温水器アリで物件の選択肢が広がる
上記のおさらいになりますが、まず「オール電化」と記載されているマンションは、エコキュートではなく電気温水器が使われていることが多いので要チェックです。
大幅に光熱費が節約できるエコキュートとは異なるため、かならずしも「オール電化=エコキュートで光熱費大幅節約」にはならない点に注意しましょう。
ですが電気温水器の物件は、専有部内に設置場所を取ること以外は、ガス給湯器の物件とあまり変わらない環境で過ごすことができます。
そのため、物件の間取り図を見て「電気温水器の物件だ、よくわからないからナシ」ではなく、「現地を見て問題なければアリ」というように、ぜひ物件の選択肢に入れてみてください。物件の幅がぐっと広がります。
そして、エコキュートではない物件からエコキュートへの変更は、設置場所や配管経路のハードルが高いため、まだまだ管理組合の許可をもらうことが難しい状況です。
ただしエコキュートに変更した住戸があるマンションも出てきているので、物件探しの際には過去に変更実績があるマンションなのか、不動産会社を通じて確認してみましょう。
弊社イーコンセプトでは不動産部門のほかにもリノベーション部門があるため、中古マンションの設備機器のメンテナンスや交換などの疑問やご相談にもお答えしております。
住まいは大きな買い物だからこそ、購入前に「引渡し後の暮らし」を見据えた物件選びをサポートさせていただきます。
「どんなマンションが合っているか」がわからないという方は、ぜひご家族の暮らし方からお聞かせください。